こんにちは、イチです。
今回も「緑の雇用(新規林業従事者の研修システム。3年間)」について記事にしました。
私は「緑の雇用」3年目の林業従事者です。
そのため最後の研修年度ということになりますね
前回の記事でも書かせていただいたんですが、林業従事者は「FW(フォレストワーカー)」と呼称されています。
そのためこの記事でもFWという表現を使用して書き進めてまいりますので、どうぞご了承ください。
研修(実技)の最中にスマホで写真を撮るのも難しく…基本は文章での記事になります!
Contents
FW3年目「 緑の雇用 スケジュール 」一覧(2023年度)
以下が今年度のFW3年生の研修スケジュールです!
オレンジ色にしている部分が、今回記事にしていく研修です。
7月11日(火) 資格・学科 | 伐木等機械・簡易架線集材装置 特別教育 |
7月12日(水)資格・実技 | 伐木等機械 特別教育 |
7月13日(木)資格・実技 | 簡易架線集材装置 特別教育 |
8月7日(月)講義 | 素材生産での労働災害 現場作業の総合力 |
8月8日(火)実習 | 安全な掛かり木処理作業1 |
8月9日(水)実習 | 安全な掛かり木処理作業2 |
9月5日(火)講義 | 森林整備の省力化・低コスト化 |
9月6日(水) 講義・実習 | 路網の種類と目的 安全な路網開設・維持作業1 |
9月7日(木)実習 | 安全な路網開設・維持作業2 |
9月8日(金)講義 | 木材の特性 森林施業の体系 |
10月18日(水) 講義・実習 | 効率的な高性能林業機械の使い方1 |
10月19日(木)実習 | 効率的な高性能林業機械の使い方2 |
10月20日(金)実習 | 効率的な高性能林業機械の使い方3 高性能林業機械操作の検証 |
11月27日(月)講義 | 事業所経営の展望 安全な素材生産作業の確認 機械類の管理手法 |
11月28日(火)実習 | 車両系機械のメンテナンス |
11月29日(水)実習 | 架線系機械のメンテナンス |
11月30日(木)講義 | 木材流通と木材利用 |
8月7日(月)講義 素材生産での労働災害・現場作業の総合力
初日は講義ということで、研修施設で座学です。
ありがたい機会ですよね
1年間で発生した労災について
表にした「労災一覧」みたいなのを見せていただきました。
緑の雇用の研修生に発生したものだけなのですが、程度が軽いものも含めてかなりの量。
特に「滑落」が多いようですね。
原因は「慣れないチェーンソーブーツを履いて慣れない山林作業をしているから」と考えられています。
なぜなら、チェーンソーブーツの着用が奨励されるようになって滑落事故が増加しているから。
あちらを立てればこちらが立たずという感じでしょうか
歩き方の指導をするよう言われている、とのことですが…
なかなかそれを現場に求めるのも難しいところだと思います。
歩きやすい山をあてがって、順番に慣れていってもらうのが良い気がしますね…
そのほか、労災で休んだ場合の補償の計算方法などを教えていただきました。
労災DVD
ケーススタディのような感じで、発生した労災の分析をするもの。
研修ではよくある時間です。
伐倒時、掛かり木処理、造材(切った木を丸太にする作業)、下刈(木を育てる作業)、滑落の労災を記録したものでした。
分かっていても労災が発生した瞬間が訪れると体がビクッてなります…(苦笑)
この1年で体験したヒヤリ・ハットの意見交換
班ごとに意見交換。
その後全体で、班の代表が自らの遭遇したヒヤリ・ハットを話します。
・木を切ったところ見えない高さにツルが絡んでいたこと
・雑木を切ったら裂け上がってしまったこと
・雪で足元が悪く滑落したこと
・伐倒方向が予期せぬ方向になったこと
などなどでしょうか。
どれもケガにはつながりませんでしたが、一歩間違えば重大事故になっていてもおかしくないケースだと思います。
1年間でこれだけ出てくるわけですから、安全への意識はどれだけ高めても良いですよね
林業の年千人率(一年間での事故遭遇率)が他の仕事の10倍以上というのもうなずけます。
林業技術の指導ポイント
こちらもDVDを見せていただきました。
新しく林業に従事した人への指導の注意点をまとめてあるもの。
Woodman Workshop 代表「水野雅夫」さんの指導について収録されていました。
以下でいくつかポイントを紹介します。
・かつて多くの人が祖父や父と一緒に山に入っていたため、新しく林業に従事するといっても、ある程度の山の知識を持っているのが普通だった。だから「俺の仕事を見とけ」みたいなことを親方が言ったとしても、これまでの自分の経験と相対化することができた。しかし現在はそうではない。明確に「〇〇を見て」「〇〇を意識して」と表現しなければ分かってもらえない。
・新人の指導にベテランがあてがわれるケースが多いが、これは無駄がある。ベテランは稼ぎ頭だし、バリバリ仕事するべき。新入社員は素人なのだから、「林業の作業ポイントを理解している、指導力が高い従業員」が指導を行うのが良い。指導者と新入社員のコスト意識を高めるイメージ。例えば体の使い方もコスト意識。楽な体の使い方ができれば疲労もたまらず作業効率も上がる。
・今自分たちがしている作業が、林業においてどのような位置づけなのか、作業の結果どのような山になっていくのか、ということを伝える。また、林業界全体のことについての知識(歴史や流通、製材、販売、補助金など)についても高めていきたい。
などなど。
まだ他にも指導のポイントや考え方があったんですが、著作権などの関係もあるのでこのあたりで。
非常に勉強になりました。
HPもありますので、気になった方はご覧ください。https://bakkenxx.wixsite.com/mysite
どんなことをされているのかイメージがつかめると思いますよ!
8月8日(火)実習 安全な掛かり木処理作業1
実習初日は現場へ。
実際に伐採を行っていきます。
少人数の班で行動し、伐採の練習がてら掛かり木処理を行う感じですね。
ヒノキの人工造林なのでめちゃくちゃ掛かり木になります
掛かり木とは、「切った木が立っている木に引っ掛かって倒れない状態」を指します。
林業ではこの「掛かり木処理」で多く労働災害が発生しているため、その処理を安全に行う必要があるんです。
スギだと枝葉が弱く倒れやすいらしいんですが、ヒノキはなかなか倒れません。
人工林のようにヒノキが密集しているとまず掛かります。
木が掛かった場合はフェリングレバーやロープなどを活用し、掛かり木を立木から外していきます。
これがめちゃくちゃしんどいんです…
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これがフェリングレバー。
バールのようなものですね。
かぎづめを木に打ち込み、レバー部分を持って押したり引いたりして木を回します。
木が中心同士で掛かっていたらなかなか難しいですが、掛かられている木の中心から外れている状態であれば、くるっと木が回って落ちてくれます。
先端はテコみたいに使うことができるので、意外と用途は広い
他にもこの日はロープなんかを使って掛かり木処理を行いました。
大人が4人がかりで、へとへとになって掛かり木処理…
掛かり木にそもそもならないよう、ピンポイントで木を倒すようにしないとダメですね
8月9日(水)実習 安全な掛かり木処理作業2
実習2日目は林業技術研修棟へ。
令和3年に竣工した新しい施設です。
https://www.pref.okayama.jp/page/708958.html
本当はもう一日同じ現場で実習予定だったんですが、風が強くて中止になったんですよ
そのためこちらでチェーンソーのメンテナンスと刃に関する講義、伐倒練習機を用いての実技を行いました。
そして、伐倒練習機はこんなのです。
フォレストジャーナルさんから写真をお借りしています。
乗っている部分の角度だけでなく、中央に立たせた木の角度も変えることができます
(ちなみに価格は500万円くらいだそう)
チェーンソーの刃を研ぐ5つのポイント
去年聞いていたはずなんですけど忘れてましたね…笑
横刃…やすりの上部5分の1を、上刃からはみ出させると良い
上刃…角度を30°にそろえる、大きさ(長さ)をそろえる、上刃をまっすぐにする
デプス…高さをそろえる
もう一度こちらでも確認しておきます…
それともう一つ。
私のツイートで恐縮ではあるのですが、引用します。
チェーンソーの刃を従業員に研がせないとおっしゃっている講師(某社長)の方が…!
けっこう衝撃でしたね。
これについては賛否両論で、リプ欄でいろいろな意見が飛び交いました。
私としては、
・効率化として理解できるし、山でチェーンソーの刃を研ぐ時間がもったいないのは事実
・ただ、刃を自分で研ぐことで得られるものはけっこう多い。刃を長持ちさせるためにどう立ち回るかとか、動きにまで考えが及ぶこともある
・すでに刃を研ぐことができる人が効率化で機械を使用するのがベストか?
という考え。
ただ木を切っている時間しか金銭が発生していないという意見はまったくその通りなので、いろんなことを考えるきっかけになりました
林業の資格取得について
緑の雇用は3年間あり、そのなかでチェーンソーを使用した講義・実技は複数回あったのですが、今回で最後になりました。
何度も来てくださっていた講師の方々とも、研修の中ではお会いする機会がなくなります。
そのため研修の最後に講師の方が一言ずつお話してくれました。
特に記憶に残っているのは次の言葉。
またもや私のツイートですみません…
ただでさえ危険性が高い林業という職、安全第一で取り組まないといけないなという気持ちが一層強くなりました。
技術向上に向けて
初心者は許容範囲を広げてはいけない。
これも勉強になった言葉。
下刈をするにせよ間伐をするにせよ、目標を高く持つことが大切。
「まぁこれでいいか」は技量向上にとってめちゃくちゃ邪魔な考えだから、です。
もちろん自然が相手なので、許されるブレは存在するのは事実ですけどね
ただこのブレを当然のこととせず、精度を向上させていく意識を持つべき。
特に初心者は。
この言葉も非常にためになりました。
まとめ
以上、8月にあった緑の雇用についてまとめました。
資格を新たに獲得するような研修ではなかったですが、学びが深まる良い時間になりました。
今後もまだ研修はあるので、そちらもしっかりと記録に残しておきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!