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【林業家が使う笹刈刃】目立て、ヤスリ、アサリは? オススメはこんな刃

2023年7月15日

こんにちは、イチです。

少し前に下刈の記事を上げたので、今回はそれと関係したものを。

使用している「刃」について話題にしてみたいなと思います!

ただここにはこだわりのある人も多そう。

あくまで一般的なもの、なおかつ私の経験に基づいたものであることをご了承ください。

記事では笹刈刃の切れ味を決める要素を中心にまとめました。

ですのでそこから自分にあったものを考えていただければ…!

事務所に置いてある刃

これから写真を4枚上げていきます。

・チップソー3種類

・笹刈刃7種類

です!

事務所の刃のラインナップ1 チップソー「一閃」 チップソー「超人」
事務所の刃のラインナップ2 チップソー「めちゃかる」 笹刈刃①
事務所の刃のラインナップ3 笹刈刃② 笹刈刃③ 笹刈刃④
事務所の刃のラインナップ4 笹刈刃⑤ 笹刈刃⑥ 笹刈刃⑦

どうなんですかね、これはラインナップとして多いんでしょうか…?

個人的にはけっこう種類が多くて、いったいどれを使ったら良いのやら…という感じであります。

基本的に造林のメンバーは「笹刈刃」を使用していて、チップソーは石垣の多い現場とか、個人さんのお宅へ草刈りに出向く際使用します。

笹刈刃の方が切れ味が良く、少々太い木なんかでも切れるからですね。

事業体によってはチップソーを刃分けして太い木を切っているところもあるようですが、私の事業体では誰もしていません。

あくまで切れ味を求めるなら笹刈刃、耐久性を求めるなら笹刈刃、という感じです。

事務所においてあるもの(笹刈刃)を一覧にしておくとこんな感じ。

サイズ厚み(3種類)歯の数備考
2801.05 1.15 1.25301.05のみ穴なし
3051.05 1.15 1.2530

そして、もちろん職員割引なんてものは存在しません!

安くしてくれたらええやん…と思うんですが、昨今の状況を考えれば値上げしていないだけマシですかね…。

私が使う刃

私が使う刃は穴付きの「笹刈刃」で、以下のようなもの。

・径…280

・厚さ…1.15

・歯数…30

というのが基本情報になります。

アマゾンで同じものは売っていなかったので、似たものをPRしておきます!

津村鋼業 ツムラ 笹刈刃 穴付 ミガキ 255mm×1.25mm×30P 1412

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私が使っているものとの違いは「やや刃の大きさが小さく」「厚みがある」という点。

刃全体の大きさが小さいため、業務用でない刈払機でもエンジンのパワー不足になりにくいと思います。

また厚みがあるので、刃の耐久性もやや高いです。

刃分けをするのがやや硬いかも知れませんが、刃分けは少しでも十分効果があるので…

私が使う刃

ある日の仕事終わりの刃ですね

ここからもう少し手を加えるんですが、だいたいこんな感じ。

「そこそこの切れ味が長く続く」ことを意識しています。

刃の切れ味はどうやって決まるのか

刃先の尖り

もっとも大きな要素が、

刃先がピンピンかどうか

ですね。

実際にはもう少し要素が絡みますが、単純化するとそうなります。

次の刃を見てください。

刃先が白くなった刃

先が白くなってますね

これは切れ味が悪くなった刃、です。

山の中に転がっている石などや、放置されたワイヤーなどに当たるとこうなりやすいです。

先がとがっていない=光が反射して白く見えるということですね。

刃を研ぐことを「目立て」といいますが、こうして先が白くなるとけっこう頑張って目立てをしないといけなくなります。

ひどい場合は「グラインダー」という道具を使用します。

新品のものを見てみましょう。

新品の刃

光が反射しないということは、しっかり先がとがっているということです

刃の厚み

事務所のラインナップでいえば

・1.05

・1.15

・1.25

の厚みのものがあります。

薄ければ薄いほど切れ味が良くなります

後述しますが「刃分け」の加工も薄いとしやすいですね。

ですが、薄いものほど石などに当たったときのダメージが大きい…。

こだわりが弱い私はとりあえず中間の厚みのものを選んでいます笑

あとは若干ではありますが、重みが違いますね

長時間刈払機を使用するので、少しでも軽い方が楽な感じはします。

丸ヤスリの当て方

こんな角度で丸ヤスリを入れると切れ味が上がります。

切れ味が上がるヤスリの当て方

より刃先がとがるわけですから当然です

じゃあ切れ味よりも耐久性を意識した場合の丸ヤスリの当て方は…

刃が丈夫になるヤスリの当て方

そりゃまぁこうなります

角度をつければつけるほど切れ味が良くなる代わりに、ダメージを受けやすくなります。

つまり、刃が薄ければ薄いほど、角度がついていればついているほど、切れ味が良い。

しかしその分ダメージを受けやすい、ということですね。

じゃあどっちが良いのか?

こればっかりは好みになりますね…

私はどちらかと言えば下の写真に近い研ぎ方です。

耐久性を意識して、研ぐ回数が少なくなるようにしています。

山の中では刃を研ぎにくい場合も多いですし、できるだけ切れる時間が長い方が(個人的には)良いので。

「平ヤスリ」という平らなヤスリがあるんですが、それを使ってさらに刃先を尖らせる事業体もあると聞いています

丸ヤスリの種類

ヤスリ2種類。オレンジが7ミリ、青が8ミリ

事務所では2種類の丸ヤスリを取り扱っています。

わかりやすいように持ち手の色を変えました

上のオレンジの持ち手の方は7ミリ、下の青い持ち手の方は8ミリです。

7ミリの方が先を鋭くできます。

ですが私は8ミリを使っています…

メーカーのHPにも書かれていますが、7ミリの丸ヤスリで作った刈刃だと切り株などに食い込んだ際に抜けにくいんですよね。

下刈や除伐といった作業をしていると、どうしても切り株にぶつかることを避けられません。

そういったケースで処理しやすくなることも含めて私は8ミリを使用しています。

ちなみにヤスリ関係でいくと前の項目で触れた「平ヤスリ」がありますが、事務所で扱っているのは変な形なんですよね。

断面が菱形みたいな

なので使いづらく、この平ヤスリの使い方は全然上手になっていませんし、なんならよく分かっていません。

刃分け

林業では刃先を尖らせるだけでは切れる刃を仕上げることができません。

草は切れても木が切れないですからね…

そのために必要な作業が「刃分け」と呼ばれる作業です。

普通の刃を側面から見てみると、

刃分けをしていない刃

まぁこんな感じですよね。

まっすぐで一枚の金属って感じです。

一方刃分けをしたものだと、

刃分けをした刃2

こんな感じ。

刃が左右に振られているのがわかりますね。

これは視覚的に分かりやすいようやや極端に刃分けをしていますが、木を切るならこの作業が必須です。

こうしないと刃が木に挟まれていき、どんどん摩擦が働いて切れなくなっていくんですよ

切れ味が悪い刃と組み合わせると、切ってる途中に焦げ臭いニオイがしてきます…笑

切ったあとの切り株が真っ黒になるので、「あぁぁあ…ダメだこりゃ…」となります。

この「刃分け」には「アサリ割り器」という道具を使用するのですが、どれだけ刃分けをすれば良いのかは難しいところ。

公式のHPに詳しく載っていましたので、こちらをぜひ参考にしてください!

非常に分かりやすいですし、効果的な刃分けの仕方を説明してくれています。

津村鋼業株式会社HP「各種研磨方法」http://tk-kakubato.co.jp/publics/index/18/

こういう基本を押さえて、そこから先は好み…という感じにしていくのが良いのではないかと思います。

HPではチップソーの研磨方法も記載されています。

私はチップソーの研磨はしたことがないので、非常に勉強になりました

その他の要素

刃のバランス

極端なことを言えば、刃の右半分だけをヤスリで削りまくると左半分が重たくなりますよね。

そうすると刃の回転がガタガタとおかしなことになり、機械にも負担がかかります。

いろいろな衝撃が相まってくると刃の中心部にヒビが入ることも…。

できるだけ刃をバランスよく研いでいくのが良いように思います

次の写真を見てください。

刃の向きを違う色で示したもの

赤い○がついている歯はこちらに向いていますね。

一方、青い○をつけている歯は向こうを向いています。

歯の向きが交互になっているんですね

私はいつも青い丸の歯を左手で研ぎ、赤い丸の歯を右手で研いでいます。

私は左利きなので、左で研いだ歯の方が早く短くなってしまうんですよね…。

だから左手で5回研いだ場合は右手で7回研ぐ、というように調整しています。

またこれは私のクセなのですが、右手で研ぐと中心に向かって歯を研いでしまう傾向があります。

えぐっていくような、深い歯になりやすいんですよね。

左手で研ぐと歯に対してまっすぐできるんですけど…

なのでそのあたりも調整しつつ研いでいます。

研ぐと出てくるがたつき

次の写真を見てください。

歯の横の部分

赤く囲まれた部分ですが、少し落ちてますよね。

きれいな直線になっていません

歯の研ぎ方にムラがあったり、私がそもそも8ミリのヤスリを使用していることにも関係があると思うんですが、どうしてもこのようになってしまいます。

ここを平ヤスリでまっすぐにすると、余計な部分が削ぎ落されて刃の切れ味やバランスが良くなります。

私はあまりがっつり効果を感じたことはないのですが、班長は欠かさずやっておられますね

私は定期的にグラインダーを使用して整えています。

先輩からの目

これは切れ味でもなんでもないんですが…笑

先輩に見られてる、と思うと「しっかり刃を作っとくかー!」と思います

実際私の刃を見て「よく研げてるなぁ」とか言われると

へっへっへ

と素直に嬉しいです笑

後ろから重機で追いかけられるようなかたちになっても、良い刃だとザクザク切り進められるので追い付かれません。

作業後に「良く切れる刃ァ使っとるなァ!」

と言われると、こちらも嬉しい笑

その反面、石に当たったあとの切れない刃を使っているところを見られると「全然切れん刃じゃのォ…」とか言われて

いや違うんですよ!

となってなんだか悔しい笑

今でこそ切れる切れないだけで言われますが、最初のころは結構丁寧に刃の研ぎ方なんかを教えてくれていて…優しい人が多いような気がしています。

刃の良し悪しだけでなく、見られたくないのは通称「殴り切り」「叩き切り」とか言われる切り方。

刃が切れないとき、刈払機に勢いをつけて無理やり切ることがあるんですよ

3年目になってほとんどなくなりましたが、1年目のときはよくやってました。

本当はそんな風に切るのは良くないです。

機械や刃だけでなく身体的な負担も非常に大きいですからね。

理想的には、刃は木にそっと当てるだけ。

それが良く切れる刃だと、まるでバターを切るように刃が吸い込まれていくんです。

いろいろな理由で切れ味が落ちてきて、でももうすぐ作業が終わる! なんて時に私はやってしまいがち。

それを見られると確実に「刃が切れんのか?」と聞かれるので見られたくないです笑

直接的には関係ないですが、先輩から見られてると思うと気が引き締まって刃を丁寧に作ろうという気持ちになるので、要素としてあげました。

まとめ

以上、下刈や除伐で使う刃(主に笹刈刃)について書き連ねてきました。

切れ味を決める要素をまとめておくと、

1.刃の薄さ

2.ヤスリの種類

3.歯の尖り

4.ヤスリの当て方

5.刃の全体的な形状

6.刃分け

などです。

ですが、3~6はあくまで自分の工夫の範囲。

購入段階で決まってしまう「1.刃の薄さ」「2.ヤスリの種類」を意識して刃を選んでいただければ良いかなと。

それが私としてはおすすめです。

林業を初めて3年目、そこそこの刃は作れるようになってきたかなぁと思いますが、こだわったらどこまでも追求できそうな気がします。

チップソーなんかはまったく研いだことないですし…。

また、「切れる刃を作ること」と、「切れ味を保つ作業方法を体得すること」は全く別だとも思います。

刈払機や体をどう動かすかで、刃の切れ味が左右されるように思うので

刃を作るだけではなく、そういう動きの練度も上げていきたいなと考えています!

いろいろと意見があったりする部分もあると思いますが、あくまで私の事業体や経験に基づいたものであることを承知していただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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