林業

【解説】林業の仕事内容とは。「造林」と「素材生産」の業務をご紹介

2023年1月18日

皆さん、こんにちは。

イチです。

最初の記事として何を書くか迷っていたんですが、やはり「林業」について書いていこうと思います。

「林業」の仕事内容を概括的に、なおかつある程度具体的に書いていきますので、きっと参考になるかと。

それぞれの仕事内容については別個の記事としてアップしていく予定です

造林とは

造林の目的

一般的な林業のイメージである、木を切り、運び出し、市場に運ぶ、ということとは違う業務です。

木を植え、育て、間伐する、それが造林です。

つまり「森林を作る」ことにあります。

山を作る仕事だと理解しておいていただければまず間違いないかと。

今は環境問題に対して意識の高い方がたくさん増えている現状がありますから、こちらの仕事内容にも興味を持つ方も多いと思っています。

重機で木をガンガン切っていく派手さはないですが、自分の体一つで山に入っていく、こちらもこちらでかっこいい仕事です。

林産がすべて木を刈った山に苗木を植え、森林の再生産を行います。

このセットによって、森林は繰り返し利用可能な資源になるわけです。

木材が、完全に人間によって再生可能な資源だと表現される理由はこの造林にあります。

私が従事しているのはこの「造林」です。

環境保全にも繋がる、尊い仕事だと考えて飛び込みました。

造林の流れ

1.地拵え(じごしらえ)

地面に散らばった枝などを、等高線上に並べていく作業です。

春の植林(植え付け、植栽)に備えて、基本的には冬に行います。

写真左側は地拵え「前」、右側は地拵え「後」です。

右側は苗を植えやすそうですよね。

重機が入ったあとの山は、正直汚いです。

枝が適当に散らばっていて、かなりの層になっていることもあります。

また伐採をした後から植えるまでに時間があくと、写真のように関係のない木々が生えてしまいます。

そうなると地面が見えず、苗を植えることができません。

地拵えをすることで、春の植え付け(植栽)がスムーズにできるのです。

2.植林(植え付け、植栽)

個人的には造林の花形です。

写真のものは、私が初めて植えたものです!!

今後の仕事を考えて等高線に苗木を植えていきます。

大体2~3年生の苗です。

背中に苗木袋を背負い、クワを持って山に入ります。

主に春や秋に植えますが、最近は「コンテナ苗」というものが開発され、土壌が凍結する時期以外は植えられるようになりました。

3.下刈

上の写真は下刈「前」、下の写真は下刈「後」です。

下草がなくなってさっぱり!

私たちの事業体では、植林(植え付け、植栽)から5年間は「下刈」を行います。

刈払機で雑草を刈り取ります。

メインとして植えた木(主林木といいます)よりも雑草の成長具合が早く、主林木の生育不良をもたらすからです。

夏に行うためかなり過酷な業務です。

4.除伐

植林(植え付け、植栽)から10年ほどした林では「除伐」を行います。

主林木はかなり大きく成長していて雑草には負けませんが、ブナやコナラ、クリといった雑木には負けてしまいます。

雑木の方がしぶとく、そして早く成長するからです。

下刈ほど頻繁に行う必要はありませんが、定期的に状態を確認しておく必要があります。

使用する道具は下刈と同じ「刈払機」です。

季節は特に問いません。

余裕があるときに行います。

5.枝打

植林(植え付け、植栽)から11~15年ほどした林では「枝打」を行います。

ハシゴなどを使って木に登り、枝を付け根から切り落としていきます。

上の写真が枝打をせず、枯れて落ちてしまった枝の後です。

下のこちらの写真は、しっかりと枝打をした場合の後です。

穴がなくなっていますね。

枝打をすることで製材したときに節のない木にすることができます。

また、害虫がつきにくくなったり、森林火災の被害を軽減することもできます。

最近は枝打で捨てる枝から、節穴をふさぐ「ボタン材」というものを取ることもあるとか。

私の職場ではノコギリを使って一本一本枝を切っています。

だいたい2~4メートルの高さまで行います。

木が成長している時期に行うのは良くないため、主に秋から冬にかけて行います。

6.間伐

植林(植え付け、植栽)から16~20年した林では「間伐」を行います。

成長にムラができ、林に生えている木の質がまちまちになるころであり、林内に光が差し込みにくくなってくるころでもあります。

素材生産(林産)で行う間伐は「列状間伐」ですが、造林の場合は「切り捨て間伐(保育間伐)」を行います。

生育不良の木を伐り、地面に日が当たるようにします。

切った木は搬出しないでそのまま山に放置します。

もったいない!

ですよね。

もったいないですが、いちいち搬出しても利益が出ないので仕方ありません…。

造林まとめ

以上が造林の仕事です。

もう一度季節ごとの仕事を整理しておきます。

冬 地拵え、枝打、間伐

春 植え付け

夏 下刈

秋 植え付け、枝打

※除伐は年中

森林を再生することは簡単ではないと思い知る業務ですが、それでも大きな時の流れに取り込まれた気がして、非常に心地よい仕事です。

私は教員から造林に転職しましたが、正直教員をするような人間は林業に向いていると思います。

同じように育てる仕事ですし、長い目で見なければいけませんからね…。

教員の研修で林業体験をしてみたらどうかと勝手に思ってるくらいです。

素材生産(林産)とは

素材生産(林産)の目的

一般的な林業では、大量に木を山から切り、市場に運び、売却して利益を得ることです。

「一般的な林業では」と断りを入れたのは、そこから木を合板等に加工する業者もいるためです。

私のいる事業体では、あくまでも市場に運ぶところまでです

そして近年、この素材生産(林産)を行う業者は増加傾向にあります。

様々な補助金制度が利用できること、機械化が進んで作業が楽になったこと、日本全体のスギ、ヒノキの伐期(50年前後)が来ていることなどが要因です。

特に伐期については物申したい点もありますが、ここでは概要の紹介にとどめます。

なお、山から木を切り出すやり方は2種類あります。

・全伐=その山に生えている木をすべて切り、丸裸にするもの

・間伐=切った木を運び出しやすいよう、縦一列に切っていくもの。様々な種類がありますが、私の事業体では「2残1伐」と呼ばれる、「1列切ったら2列残し、また1列切る」というやり方の列状間伐が多いようです。

素材生産(林産)の流れ

1.重機の運搬

現場が決まれば重機の運搬を行います。

私の事業体では、2人班では4台の重機、3人班では6台の重機を使用しています。

人数より重機の数の方が多いの⁉

という感じですが、そうですよね、それが普通の感覚だと思います。

私の事業体では25トントラックで運搬します。

トラックだけでめちゃくちゃでかいです。

2.道づくり

山に来たものの、道がない山の場合は重機が入れません。

その場合は山に道を作っていくことになります。

使用する重機はグラップルバケット(通称:ザウルス)と呼ばれるものです。

ショベルカーの先が物を挟めるようになってるんですね。

つかむこと、掘ることができるため、山を削って無理やり道を作っていきます。

立っている木は切れませんので、人がチェーンソーを持って重機の人の指示を受けながら先に進みつつの作業です。

3.土場作成

人数によっては「2.道づくり」と同時並行で行う作業です。

「土場」という言葉を聞いたことがない方もおられると思いますので、その定義を。

デジタル大辞泉によると「切り出した材木を一時集めておく所。また、上流から流した材木を陸揚げする所」

産廃・リサイクル・環境用語辞典によると「森林で樹木を伐採したものを集めて、梢や枝を落とし、製材用丸太にする作業場」

とありました。

下の方の定義がそれっぽいですね

「山土場」と呼ばれる場所を平らなアクセスの良い場所に作り、そこに丸太を置いておきます。

そこからトラックで山から運び出し、市場に持っていくわけですね。

道や土場がすでにある場合は、ここまで大変なことにはなりません。

ただ余計な木や草が生えていると邪魔になるので、人力で「刈払機」を使用して邪魔なものを刈り払います。

4.伐採+集材

いよいよ伐採作業です。

木をどんどん道に向かって倒し、集材します。

道まで届かなかった木は、重機についているウインチを使用して回収します。

私の事業体では「グラップルバケット(ザウルス)」にウインチがついているので、そちらを使用します。

ウインチは、よく漁船とかで網を引っ張り上げてる、あのくるくるまわるやつです

人が倒した木まで走っていき、ウインチを取り付ける→合図とともに重機のウインチを作動させる、という感じです。

5.造材

倒した木そのままでは市場に持っていくことができません。

一定の長さの丸太にする必要があります。

その際に使用するのが「プロセッサ」です。

この機械は優れもので、枝が付いたままの木をつかむと、そのまま丸太にしていくことができます。

先端のローラーで木をズルズルと根元から動かしつつ、枝をバリバリと外していきます。

そして設定した長さで、木を持ち上げたまま丸太に切ってくれます!

この重機を持っていない場合は人が手作業で造材を行います。

チェーンソーですべての枝を落とし、メジャー等で長さを測って丸太をつくっていきます。

6.運搬(山から山土場まで)

運搬の際は2種類の重機を使います。

フォワーダ」と「グラップル」です。

フォワーダはキャタピラがついている、「山でも走れるトラック」みたいなもの。

フォワーダに木をつかむアームがついているものもありますが、私の事業体ではアームはなく、走行のみのタイプです。

山の中でグラップルで造材した木をつかみ、フォワーダに積載します。

土場についたら、再びグラップルで木材をフォワーダから山土場に降ろします。

そこにトラックがやってきますので、再びグラップルでトラックに積載し、市場に持っていきます。

素材生産(林産)まとめ

以上が「素材生産(林産)」の流れです。

いろいろな事業体がありますからこの限りではないと思いますが、参考までに。

重機がそれぞれどこで使用されているか分かったと思います。

山に「グラップルバケット(ザウルス)」、「プロセッサ」、「フォワーダ(木材運搬)」「フォワーダ(重機燃料運搬)」「グラップル」

山土場に「グラップル」

以上6台ですね。

2人の場合は「フォワーダ1台(木材運搬)」、「プロセッサ」、「山用グラップル」「山土場用グラップル」で重機4台です。

実際は作業範囲を間違わないための測量なんかもあるんですが、ここでは省略します。

全体まとめ

長くお読みいただきありがとうございました。

次回以降林業の仕事を紹介する際は、個別の仕事についてもう少し詳しく書いていこうかなと思っています。

私が造林なのでそちらが中心になるかと思われますが…。

よろしくおねがいします!

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