林業

【解説】林業(造林)の「植林」とは。目的、時期、道具、方法をご紹介!

2023年4月1日

こんにちは、イチです。

今日は「植林」についてお話していきます。

職場では「植え付け」、もしくは「植栽」とも呼んでいますが、ここでは植林に統一します。

その方が分かりやすいので!

植林のためには「地拵え(じごしらえ)」という仕事が必要です。

どういう仕事かは記事にしていますので、気になる方はご覧ください。

植林って?

地拵え編でも書きましたが、詳しく林業のサイクルを説明すると、

植林(植え付け、植栽)

→下刈、除伐、間伐(育てる)

→皆伐(伐採)

→地拵え(植林準備)

→植林…

という感じになります。

つまり今回書いていく「植林」は「地拵え」の後に行う作業です。

そして「植林」のあとには「下刈」が待っています。

植林作業自体はシンプルで、山に苗を植えるというもの。

山主(山の持ち主さん)の希望した種類の苗木を山に植えます。

植林は地拵えに比べて地域や事業体によっての違いは少ないと思いますが、今回ご紹介できるのは私の事業体に関することになります。

そして、林業は循環産業と呼ばれています。

それは、伐って使い、植えて、育てて、再び伐って使うというサイクルになるためです。

林業に初めて就業する人間は「緑の雇用」という研修に(基本的には)参加できるのですが、そちらでは「木材は人類が再生可能な唯一の資源」なんて呼ばれていました。

興味のある方はこちらもどうぞ。

ちなみになんですが、皆伐(木をすべて伐ること)後の山に、もう一度木を植えることを「再造林」というのですが、人手不足もあって全体の3割くらいにとどまっているのが現状です…。

目的

前述したとおり、「山主の希望した苗木を植えること」が目的です。

一般的にはお金になるヒノキが多いですね。

私が植えたことがあるのはヒノキ、コナラ、サクラ、カエデの4種類。

私の在住している岡山県はヒノキを植えることが多いので、スギは植えたことがありません。

コナラはキノコを栽培する原木に使用するという話でした。

サクラ、カエデは景観目的でしたね…。

こんな感じで、山主の目的によって植える苗が変わってきます。

他にも水源かん養だったり、土砂災害を防止したりというような、金銭的な利益以外を目的とする場合もあります。

いわゆる保安林、という感じですね。

このあたりもまた調べつつまとめていけたらと考えています。

時期

基本的には春か秋といわれています。

これは、苗が活動を休止しているタイミングに当たるからです。

苗が活動を休止しているからこそ、土から引っこ抜いても大丈夫なんですね。

もちろん何日も放っておくとダメになりますが

秋(ほぼ冬)に植えることもありますが、私の事業体だと春に植えるのがメインです。

ただ苗にも種類が複数あって、最近は根っこの部分に土がついたものがあります。

コンテナ苗といいますが、根っこ部分が、細めの鉢植えから引っこ抜いたそのままになってるんですね。

一般的な苗は根がむき出しですが、コンテナ苗は根っこ部分が土に覆われていて、スマートな鉢植えのかたちになっています。

画像は森林総合研究所九州支部HPより http://www.ffpri-kys.affrc.go.jp/kysmr/data/mr0102k1.htm

左側がコンテナ苗、右が一般的な苗です。

コンテナ苗の方が強く、真夏や積雪時、土が凍結している時期を除いて植えられる、というように聞いています。

苗については他にも種類があるので特徴もそれぞれ異なりますが、何かの機会にまとめる予定です。

道具

使用するのはクワと苗袋です。

【クワ】

私が使用しているクワ(全長約90センチ)はこちら。

持ち手の一番下にガムテープが巻いてありますが、これには目的が2つあります。

1つは単純に他の人の道具と間違わないため。

もう1つはクワを振ったときにグリップを良くするためです。

ちなみにですが、クワは使用前に先端部分(金属と木が繋がっているところ)は1日くらい水につけておきましょう。

そうすることで木が水分を吸って膨らみ、金属部分が取れなくなります。

わたしは一度金属部分が取れました

水につけていたんですが、時間が足りなかったのか地面が硬すぎたのか…

それからは保湿を意識するようになり、先端が取れることはなくなりました。

保湿を意識って…まるでお肌みたいですけどね

コンテナ苗を植える場合は専用の道具を使用する場合もありますが、私の事業体では取り扱っていないためクワのみの紹介としておきます。

【苗袋】

横にスリットが開いていて、そこから苗を取り出して植えます。

リュックのようになっているので、この苗袋を背負い、クワを持って山に入ります。

普通苗なら100本以上、コンテナ苗なら50本程度入ります。

重機によって踏み固められた部分に植える時もあり、その際はめちゃくちゃ苦労します…

その他基本的な装備は山を歩きやすくするための「地下足袋」、頭部を守る「ヘルメット」、手を保護する「手袋」くらいでしょうか。

「地下足袋」にはマジックテープ状のもので固定するタイプと、ハゼと呼ばれる金属で固定するタイプがあります。

マジックテープ状のものは素早く準備できますが、マジックテープ部分にゴミがついたり足と密着しなかったりという感じなので、好みの方を使う感じです。

私は植林のタイミングだと土が入ってきてしまうので、ハゼで留めるタイプを使用しています。

方法

「山に苗を植えこむ」と言葉にすれば単純ですが、少し具体的にしてみると…。

皆伐(全伐)した山は「ハゲ山」です。マジで何にもないです。そこに苗を植えます。

はげ山

②苗の種類にもよりますが、だいたい2~3歳の苗を使用します。だいたい根より上の部分が50センチくらいです。

③それらを苗袋に入れ、背負って山に入ります。

④クワを使用して苗を植えていきます。今後の仕事を考えて、等高線上に植えるのが大切です。

⑤いよいよ苗を植える穴をつくっていきます。

苗を植えるポイントの周りの落ち葉などを取り除きます。埋め戻す穴に枯葉や枝が入らないようにするためです。

⑦次に、クワで軽く打ち込みます。石があったり根っこがあったりするためです。石を本気で叩いた時の衝撃はすごいですし、根っこがあった場合も跳ね返されたりで大変です。

この地味な反動や衝撃が疲労を蓄積させるんですよ…

根が自然なかたちで入るよう、大きめの穴を掘っていきます。周囲30センチ四方くらいと先輩に言われたことがあります。このとき、しっかりと土を露出させましょう。根を土の中にしっかりと入れ込むことが大切です。根が空気に触れてはいけません。

 ※このとき大きな石があれば取り除き、邪魔な根があればクワで切っておきます。石は落石の危険があるので、動かす際は下に注意してください。

 ※切り株や岩等があって植えられない場合は少し等高線上にポイントをずらします。

⑨苗をその穴に置いたら、掘った土で埋め戻し、踏みつけてかためます。根が抜けてしまうと良くないので、強めに踏みつけます。

おおよその流れはこんな感じです。

次の苗は約「1.8メートル」離して植えましょう。

なんで1.8メートル離すの?

1.8メートル間隔にするのは、ヒノキの場合1ha当たり3000本を植えるためです。

1ha当たり2000本を植える場合は2.2メートル間隔になります。

計算式は

【 面積(平方メートル) ÷ 植える数 】で出てきた数字に 【 √ 】をつければOKです。

上記のものであれば、

 1ha(10000) ÷ 3000 = 3.333…

 √3.333=1.82

ということですね。

ここで90センチのクワが役立ちます。

1本の苗を植えたあとは1.8メートル離すわけですから、クワ2本分を測ればよいということです。

なんで等高線に植えるの?

等高線に植えていくのは夏に行う下刈作業をしやすくするためです。

木は植えるだけではだめで、きちんと育てていく必要があるんですが、その作業の1つが下刈と呼ばれる作業です。

木よりも草の方が早く生長するため、木の成長を阻害する草は刈り払う必要があるんですね。

その際に等高線上に植えておくと、①山での上下移動がなくなるため楽、②草よりも小さな苗を発見しやすい、というメリットがあるからです。

林業はこんな感じで、「ある仕事は次の仕事のため」を意識して作業を進めます。

まとめ

以上、今回は植林作業についてまとめました。

一応私が植えた苗の写真を載せておきます。

植え付けた苗

荒れ地にこの緑の苗がしっかり植わっている感動は、植えてみないとわかりません!(笑

かわいいですめちゃくちゃ。

翌日も同じ現場だと朝露がついてきらきらしてます。

「大きくなってくれよー!」と励ましたい気持ちになります。

そう思うと山の包容力ってすごいなーと。

こんなにたくさんの命を育んでいるわけですからね…。

個人的には造林における花形だと思っています。

これからも丁寧な仕事を心がけていくつもりです!

植林豆知識

ここからは豆知識なので、気になる方はお読みください!

職場の先輩に言われたことがメインになります。

苗に裏表がある?

苗には表と裏があります。気孔部分(裏)に直射日光が当たらないようにすると、苗が元気に育つようです。

職場の先輩に言われたんですが、「今はあんまり表と裏を気にする人はいない」という話も同時に聞いたので、自分自身そこまで気にしていませんでした。

ただ林業に従事して3年目を迎えるにあたり、「皆さん気にしているんだろうか」という疑問を持ちました。

そして私はツイッターを利用しているので、前々から気になっていたこととして皆さんにお伺いしてみることに。

今回はブログに載せることを断っていないので紹介にとどめますが…。

気にされる方もいれば全然気にしない方もおられましたし、学校で学んだ方も学ばなかった方もおられました。

ある方から論文の情報をいただいたので、これから僕自身もしっかり勉強していかないといけない情報であります。

自分自身の学びにもしていかないといけないので、こうしてブログにすることで、学びの宣言としたいと思います。

これまで気にしてなかったので、今年は気にしつつ植えようと思っています

苗はめちゃくちゃ貧弱?

苗は簡単に枯れてしまいます。

先輩から言われた忠告は…

「落ち葉とか穴に入れるなよ! 枯れるぞ!」

「雪があるときに植える時もあるけど、当然雪も穴に入れるなよ! 入れたら枯れるからな!」

「根はしっかり土の中にな! 間違っても外に出すなよ!」

「根元はしっかり踏み固めてくれ! 土中の空気が根に悪いからな!」

どんだけ繊細やねん

まぁでも稚樹(子供)なので仕方ないですよね。

それに居心地のよい苗畑から、大きくなれるかどうかもわからない大自然に強制的に移動させられているわけで。

根は最初から土の中にあって当然で、本来的に言えば、稚樹の段階で根が大量の空気に触れるなんておかしいですし。

体の一部が、本来触れることのないものに触れているわけですよ。

苗で言えば、根が空気に。

ぼくも生まれてから死ぬまで、体の一部が、水に浸かりっぱなしみたいな生活だったら嫌だしな…

そう思って、木のことを考えながらゴミが入らないようにしたり、根が空気に触れないようにしたりと、丁寧に仕事をしております。

苗を植えやすくするために…

ある苗業者の話で、今から20年ほど前になります。

苗を植える際にけっこう大変なのが、根をしっかりと地面に入れてあげることです。

できるだけ曲げたり折ったりしないように、広げつつ入れるように、植林する側は腐心しております。

しかし、お金を稼ごうと思えば「量」を植えることも大切で。

たくさんの面積に苗を植えるほど、儲けがでるわけですよね。

それを知っている苗業者が、根っこの部分をほとんど切り落として納入してきたことがあるそうです。

植林するのにクワがいらないような、直接地面に差し込めるような苗だったそう。

そんな苗はありえないというのが個人的な感想ですし、いくらなんでもひどい苗業者ですよね…

2年生の小さめの苗と、3年生の大きめの苗だとどっちがいい?

値段は2年目の方が安く、3年目の方が高いです(当然)。

ですが単純に3年生だと大きい状態でスタートするので、周囲の草の成長に負けにくいはず。

色々なメリットとデメリットがある…と思うのですが、先輩は「2年目の苗の方が良い」と。

理由は、「風」。

この風がけっこう馬鹿にできないそうで、大きければ大きいほど苗が風でぐらぐらしてしまい、しっかり踏み固めたはずの根元が弱くなってしまうらしい。

あとは苗袋に小さい苗の方がたくさん入るので運びやすい、というのもあります。

どちらの苗が良いかは山の状況や植生との関係もあるでしょうが、「風」という要素も検討してみて良いかも?

苗に変なのが混じってる!

ふたまた苗

こんなのですね。

成木しても二股になってしまい、良い丸太を取ることができません。

本来は出荷の段階で取り除いていただく予定なんですが…

3000~4000本単位で届くので管理できないんですかね

基本的に植えますが、苗に余裕があるなら植えずに処分することもあります。

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